病棟で働く介護福祉士・看護補助者のリアル

~ 「誰でもできる仕事」じゃない! 現場のリアルと課題を考える ~

目次

「介護職って誰でもできる?」

「資格がなくてもできるんでしょ?」
「お給料、低いんでしょ?」
「人手不足だから誰でも採用されるよね?」

こんな声を聞くことがあります。
確かに、介護職の求人では「無資格・未経験OK」と書かれているものもあります。
ですが、「誰でもできる仕事」ではありません!

厚生労働省が2024年7月12日に公表した第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数の推計によると、2026年度には約25万人、2040年度には約57万人の介護職員が不足すると予測されています

(「第9期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(令和6年7月12日)」別紙1より)

これからますます人手不足が深刻になる中で、「とにかく人を確保したい」という思いから、無資格・未経験者も採用されているだけ で、実際に現場に入ると、相応の専門性や適性が求められます。

私自身、病棟で介護福祉士(看護補助者)として働きながら、
「この仕事の価値をもっと知ってもらいたい」 と思っています。


「介護職=誰でもできる仕事」ではない!

「高齢者のお世話をするだけ?」
そんな簡単な話ではありません。

病棟の介護福祉士・看護補助者が関わる患者さんは、以下のような特徴があります。

食事でむせやすく、誤嚥のリスクが高い
認知症の症状があり、思わぬ行動をとることがある
自力で立てない、歩行が不安定で転倒リスクが高い
衣服の着脱が一人でできず、介助が必要

「ただのお世話」ではなく、「患者さんの命を守る」仕事 でもあるんです。

日々、転倒リスク・誤嚥リスク・体調の変化に気をつけながら 仕事をしつつ、看護師の補助業務も同時進行。


検査の付き添い、入退院対応、物品補充、環境整備、清掃…。
本当に 「何でも屋」 のように、多岐にわたる業務をこなします。

それでも、「患者さんの安全を守る」ことが最優先。
忙しい中でも、「早く終わらせる」ではなく「安全に適切に」対応することが求められます。

大変なことばかりを強調しましたが、もちろん やりがい もたくさんあります。

利用者さんの笑顔を見られたときの達成感
家族から「ありがとう」と感謝の言葉をもらったとき
患者さんが少しずつ回復していく姿を見守れる喜び

そして、何より 自分自身の成長を実感できる 仕事です。
1日の流れを把握し、看護師や患者さんのサポート役として、テキパキと業務をこなせるようになっていく
この経験は、どんな仕事にも応用できるポータブルスキル となり、簡単には身につけられない貴重な能力になります。

また、感謝の言葉をもらうのは患者さんやその家族だけではありません。
一緒に働く看護師や同じ補助者同士の間でも「助かった!」と言われることが増え、それが大きなやりがいにつながります。

この仕事は、究極の「他者貢献」の仕事 です。
誰かの役に立っていることを実感しながら働ける、そんな魅力がある仕事だと思います。


「無資格・未経験OK」ってどういうこと?

無資格・未経験OK」と書かれた求人を見て、
「じゃあ、やっぱり誰でもできるんじゃない?」と思うかもしれません。

でも、それは違います。

なぜ「無資格・未経験OK」なのか?

💡 1. 深刻な人材不足
 → 高齢者の増加に対し、介護職の数が圧倒的に足りない。

💡 2. 資格よりも「人柄」が重視されることが多い
 → 「相手に寄り添う力」「傾聴力」など、資格では測れないスキルが活かせる仕事。

💡 3. 働きながらスキルを学べる環境がある
 → 入職後に研修を受けたり、資格取得を支援している職場も多い。

💡 4. 「人材の青田買い」のような側面も
 → 経験を積んでもらい、資格を取って長く働いてもらいたいという狙いがある。

看護学校の奨学金のほかに介護福祉士養成学校の奨学金もあります。

💡例)三重県伊賀市 介護福祉士就学支援金貸与者募集

私の職場でも、無資格・未経験で入職し、働きながら実務者研修を修了し、3年の実務経験を積んで介護福祉士になった人もいます。

しかし、現場に入ってみて「思っていたのと違う」と感じて辞める人もいます。
これは、施設経験者でも同じです。

「なんとなくやってみる」では続かない。
「覚悟を持って働くことが必要な仕事」 なのです。


「本当に誰でもできるのか?」 → 答えは「NO」!

この仕事には、心構えと適性が求められます。
例えば、病棟で働く介護福祉士(看護補助者)の業務には、こんな場面が日常的にあります。

便尿失禁の対応(衣類やベッド、床まで汚れることも)
転倒しそうな患者さんを支える(とっさの判断力が必要)
食事中にむせる・誤嚥のリスクを見極める
認知症で急に怒り出したり、ベッド柵を乗り越えて落下しそうになる患者さんへの対応
夜間の見守り(夜勤)や緊急時の看護師への報告

🌀 介護職として続けられる人の特徴

⭕️ 「状況判断ができる」
  「冷静に対応できる」
  「人の役に立つことにやりがいを感じる」

🌀すぐに辞めてしまう人の特徴

❌「思っていたより体力的にきつい」
  「患者さんの急な行動に戸惑う」
 「人と接するのが苦手だった」

ただ「人が好き」ではやっていけません。
「冷静に対応できるか?」が問われる仕事 なのです。

「介護職の給料が低い」 は本当?


「介護職は給料が安い」とよく言われますが、なぜなのでしょうか?

介護報酬の上限が決まっている(介護保険制度の影響)
病院の経営状況(赤字経営の病院も多い)
介護職の専門性が社会的に評価されていない
慢性的な人手不足により、人件費を抑えざるを得ない
非正規雇用の割合が高い

しかし、実際の給与は職場によって大きく異なります。

例えば、私が働いている病院では、施設から転職してきた人の中に、

💡「月給は施設の方が高かった(各種手当がある)が、ボーナスが充実しているため、年収ベースでは病院の方が高い」

💡「夜勤手当が病院の方が手厚い」 という声もあります。

また、病院の経営母体によっても待遇は変わる ことがあります。

例えば、公立病院では、自治体によっては公務員として採用される場合もあり、安定した待遇を得られることもあります。(※具体的な採用条件は各自治体による)

💡例)三重県伊賀市の介護福祉士募集要項

「介護職=一律で給料が低い」わけではなく、職場や勤務形態によって違いがある ため、情報を集めて、自分に合う環境を選ぶことが大切 です。

病棟見学や職場体験等実施している病院もありますので、積極的に参加しましょう。
直接具体的なことを質問できるチャンスでもあります。

また、「介護職の待遇改善」に向けた動きも進んでいます。
例えば…

介護報酬の見直しを求める動き(※最新の政府方針や制度改正のチェックが必要)
専門性の高い介護職(認定介護福祉士など)は給与が上がる傾向がある
スキルアップや資格取得によって収入アップが可能

✔現場での認知症ケアを強化したい → 認知症介護実践者研修
✔ 病院内の認知症ケアリーダーを目指す → 認知症介護実践リーダー研修
✔ より専門的な認知症ケアを学びたい → 認知症ケア専門士
✔ 認知症ケアの指導や施設のマネジメントも学びたい → 認知症ケア指導管理士

こういった動きにも注目しながら、長期的にキャリアを考えることが重要 です。

(※最新の介護報酬や給与事情については、厚生労働省の公式発表や介護関連ニュースなどで最新情報を確認するのがおすすめです。)

介護職に適正があるかどうか?

どの職場にも、さまざまな人がいます。
ただし、介護現場は人手不足や業務の忙しさから、余裕がなくなりやすいのも事実です。
そのため、人間関係に悩む人も多く、介護職の退職理由として「人間関係」が大きな要因になっているというデータもあります。
(公益財団法人介護労働安定センターが実施した令和5年度「介護労働実態調査」)

もし、「自分が現場でやっていけるか不安…」と感じるなら、こんな考え方もあります。

職場は、まるで幕の内弁当のようなもの。
いろんなおかず(スタッフ)がいるからこそ、全体のバランスが取れる。
得意なこと・苦手なことがあるのは当たり前で、それぞれの持ち味を活かせばいいのです。

「適材適所」という言葉があるように、あなたの力を活かせる現場は必ずあります。
すべてを完璧にこなす必要はありません。
あなたらしく働ける場所を見つけることが、介護の仕事を続けるうえで大切なことです。

職場の人間関係をラクにする考え方 〜幕の内弁当理論〜


まとめ

私は、病棟で働く介護福祉士・看護補助者として、
「この仕事がもっと正しく評価されてほしい」 と思っています。

介護職の給料が上がれば、専門性を高める人も増える
介護職のイメージが変われば、人材確保もしやすくなる
結果として、患者さん・利用者さんへのケアの質も向上する

「介護職=誰でもできる仕事」ではなく、
「専門性があり、誰かの生活を支える大切な仕事」 という認識が広がることを願っています。

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